論文:Becky White (2015): ‘What sound can you make?’ A case study of a music therapy group for children with autism, learning disabilities and challenging behaviours
第14回勉強会も、引き続きオンラインで実施しました。
今回は、子ども領域におけるケーススタディをきっかけに、現場の音楽療法士が直面するであろう(特に参加者の1人が日頃感じている)下記のポイントについて話合いをしました。
1)音楽療法に期待されることについて
・“楽しむ”ことから一歩前へ
他の職種の中で、音楽療法が期待されている事は何でしょうか。もし、”楽しい時間
を過ごす”以上の事をそもそも求められていない場合はどう話し合っていけばよいでし
ょうか。(”楽しい”って奥が深い話でもあります)
・セッションの目的は何だろう?
時々目的の言語化や説明に困る事があります。時々、”私は○○(例えば言葉の)音
楽療法士です” と名乗ってしまえる方が、雇い手にはわかりやすいのではないか、と
悩んでしまいます。
ところが、ホリスティックな側面のある音楽療法において、局部的な目的だけを取り
扱う事は、音楽療法の性質を正確に示せているでしょうか。俯瞰的になりすぎると今
度は目的が曖昧化してしまうので、一言では片付かない、難しい問題です。
2)職場環境について
・private practiceやフリーランス:発信していくこと、価格設定の難しさ
あなたは、自分のセッションをいくらに設定しますか?幅を持たせますか?他のセラ
ピストのリサーチをしますか?
ビジネス面が強くなると、それもまた違う気がしませんか?
・音楽療法や支援のアウトリーチの必要性
もしかするとprivate practiceをするスタイルが1つの理想系かもしれません。
一方で、”セッションを申し込める、参加できる” ことの出来ない子ども達はどうでしょ うか。学校現場などにいると、こういう子ども達にも出会います。社会環境が十分でな
い子ども達にも、支援やかかわりの手を伸ばしたいとも思います。
・フルタイムで働く:ダブルアイデンティティに関する疑問
フルタイムで働かせてもらえるなら、それもすごくありがたい事でしょう。
ただ、”音楽療法士”をしながら、例えば送迎をしたり、違う関わりをする事に少し違和感
があるのです。クライエントの前で、アイデンティティが複数に渡る事に対する違和感で
す。
現状、多くは何かをしながら、音楽療法もするというスタイルが多いのでしょうし、
これを否定するものではありません。ただ、(恐らくは心理療法的音楽療法の立場から
みているから、もしくはそういう専念出来る場所で訓練を受けた背景からか)、どうも
抵抗があるのです。
・パートタイムで働く:情報共有や“外部者”感→ 3)の大切さ
パートタイムで音楽療法だけをする、という選択肢もあります。
この時、共に働く仲間として色々な情報共有・共通理解ができるような環境設定を心
がけることが大切になってくると考えています。
3)共通理解について:実践の場で、現場スタッフとどのように話し合うか。
・最初(導入時)に話をすることの大切さ
最初に、施設長やスタッフと、目的や音楽療法士の想いを伝える事、意外と状況的に
難しかったりします。それでも、最初に伝えておけば、もしかしたら違う影響や結果
であったかも、と思う時もあります。
・一緒の場にいる人と話し合うこと:共通言語、相手にどうして欲しいか。
音楽療法士はついスタッフさんへの説明が足りなくなる状況が考えられます。それで
も、一緒に働いているスタッフさんは、この場をよりよくする為に、自分達がどう動け
ばよいのか、をより知りたいと思ってくださっているかもしれません。
一緒に場をつくるために、考えやお願いしたい事を伝えていく姿勢や具体的なアクシ
ョンを、もっと増やしたいと思いました。
・共通認識
組織の中で働く場合、そこの基準を知っておく事も大切だと再認識しました。
例えば、療育施設などで、子どもの”やってはダメなライン”や、”それは危険!”なラ
インがあったとします。一方で、音楽療法の枠組みが幅広い場合、受け手は混乱する
かもしれません。そういった、いくつかの大切な共通認識を確認する気持ちとアクシ
ョンを忘れてはいけないと思いました。
【編集後記】執筆者AAの主観的な思いや感想が反映された内容となっています、ご了承ください。
論文詳細(英語)