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心理療法としてのミュージックセラピーについて②

更新日:2023年2月14日


心理療法としてのミュージックセラピーについての連載コラム(全3回)の2回目です。1回目をまだご覧になっていない方は,ぜひ1回目からご覧ください。

「心理療法としてのミュージックセラピーについて①」はこちらです。

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まず,「心理療法としてのミュージックセラピーについて①」でもお示しした,私なりのミュージックセラピーの定義をここに再掲します。

ミュージックセラピーは,即興的な音楽づくりを自己表現やコミュニケーションの媒体として用い,即興的かつ音楽的な交流を通してクライエント(患者)とミュージックセラピスト(音楽療法士)の間に築かれていく人間関係(治療関係)を土台として,クライエントの心の課題に取り組む心理療法です。

この中には,3つのキーワードがあります。1つ目は「即興的な音楽づくり」,2つ目は「人間関係(治療関係)」,そして3つ目が「心理療法」です。

「心理療法としてのミュージックセラピー①」は,このうちの1つ目のキーワード「即興的な音楽づくり」についてでした。

今回は,2つ目のキーワード「人間関係(治療関係)」についてです。この人間関係とは,当然ながらクライエントとミュージックセラピストの人間関係のことです。

どのような信頼関係も,対話を通して築かれます。ミュージックセラピーにおいては,主に即興的な音楽づくりによる音楽的な対話を通して,クライエントとミュージックセラピストが信頼関係を築いていきます。この信頼関係を,日常の人間関係での信頼関係と区別して「治療関係」と呼んでいます。

この治療関係という信頼関係はとても重要です。心理療法としてのミュージックセラピーでは,個々のクライエントが(意識的に,あるいは無意識的に)抱える心の課題に取り組んでいきます。心の課題に取り組むというのは,決して易しい道ではありません。セラピーの過程で,クライエントは自分の嫌な部分,目を背けてきた部分,つらい経験などと向き合わなくてはならないときがあります。もちろんネガティブな側面だけに目を向けるのではなく,ポジティブな側面にも同じぐらい目を向けていきます。しかし,ネガティブな側面に向き合うことは,やはりポジティブな側面に向き合うことよりも,ずっとしんどく困難なプロセスです。そのようなときにクライエントを支えるのが,この治療関係という信頼関係なのです。「このセラピストと一緒であれば,自分が目を背けてきた部分を見てみよう」,「このセラピストがそばにいるなら,あのつらい経験に向き合ってみよう」,クライエントが心からそう感じられる関係性が,本気の心の旅には必要なのです。私たちは,クライエントのどのような側面も,どのような経験も,ポジティブなことも,ネガティブなことも,クライエントのペースで,共に向き合っていきます。

日常の人間関係でも,信頼関係は一朝一夕には築くことができないはずです。それは治療関係も同じです。心の旅を支える治療関係は,ミュージックセラピーにおいて欠かせません。ですから,私たちは治療関係を築くプロセスをとても重視しています。


さて,その②はここまでです。次回最終回もぜひご覧ください。


(2021年12月 坂口みゆき)




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