内容:読書会[ケネス・エイギン『音楽中心音楽療法』より第11章「音楽の力と動きを臨床に応用する―活性化と自己の創造」(pp. 260~273)]
今回は年度始めということもあり、各自の音楽療法の仕事における変化や考えていることなど皆で話をした後で、第11章を読みました。本章は、音楽がその人の内側から動く力を活性化させるというアンスデルの「活性化(クイックニング)」の考えを基盤に、これまでの理論も統合して説明されており、臨床における経験からこれまでの章よりも実感・理解しやすく感じられました。
音楽が持つ、人を動かす力とは何か。音が「動く」と心が「動く」が同じmoveであることは偶然ではないとエイギンは言っています。音の動きと心の動きが共鳴し、感情が動くことによって身体も動き出す。重要なのは目に見える身体の動きの前に内側の心が動いていることである、というエイギンの言葉は、スターンの「情動調律」と同じだという意見が出ました。母親は赤ちゃんの目に見える動きではなく心の動きに同調しているのだとスターンは言っている。音楽療法においては、クライアントの心の動きに焦点を当てて音楽療法士が音楽でフィードバックしたり一緒に動いたりすると、クライアントの内側から動く力が活性化されます。子どもたちが「これがやりたい!」を表現できるようになったのは音楽療法のおかげだと、お礼を事業所の方から言われたという話が出たが、それも子どもたちの心の動きを大事にセッションしていたからこその言葉でしょう。
ただ、このような目に見えにくい部分についてどう保護者に説明して行けばよいか迷うという意見もあり、それぞれが行っている定期的な評価のやり方にも話題が拡がりました。今後の勉強会で、それぞれの評価表を匿名で出し合って勉強していくのはどうかという意見も出ました。