内容:読書会[阪上正巳 (2007) 「『臨床音楽学』の可能性:音楽療法の基礎学として」国立音楽大学音楽研究所音楽療法研究部門(編)『音楽療法の現在』人間と歴史者]
第15回の勉強会の題材であった,斎藤孝由 (2018)「音楽療法の今日的課題」『日本芸術療法学会誌』49(1), 36-43. の中で,斎藤氏が「今後の『音楽療法』には,ここ10年来阪上正巳が提唱している『臨床音楽学』の視点に立つ議論の深化が必要であると考える」(斎藤, 2018: 42) と記していたことから,阪上氏の「臨床音楽学」についての論考を本勉強会の題材としました。
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勉強会は,「音楽学」という学問の幅広さや,阪上氏の述べる「臨床」の意味が我々にとって不確かであること(clinicalよりもさらに大きな枠組みで捉えられているようである),多くの音楽療法の周辺領域の学問を「臨床音楽学」という名のもとに統合することに意味があるのか,「臨床/音楽学」なのか「臨床音楽/学」なのか(概念の捉え方の違い?)などが話題となり,これまでの勉強会よりも題材に対する疑問点を共有しながら話し合うような形となりました。
今回の勉強会では,参加者全員が沈黙する場面が多くありました。
「沈黙(silence)」も音楽の要素であり,音楽的にも臨床的にも重要なものです。私たちは,「沈黙」の質を静かに共有しました。
また,本会の参加者にとっての「音楽」についても話が及びました。私たちにとって,音楽は,一般的な「音楽」の概念よりさらに広がりをもったものです。いわゆる「芸術音楽」とは異なって音楽的な様々な要素を「ミュージック」として受け取ることが「当たり前」になっている我々は,特に非専門家に対するときに,そのことに自覚的であることや,丁寧な説明を心がけることが大切なのではないかと話し合いました。
(そういう意味で「臨床音楽/学」なら理解しやすいが,阪上氏の提唱する概念とは異なるかもしれません。)